「社会との接点が、ここにある」—edge2025プログラム責任者・古野茂実さんインタビュー

18年間、社会課題と向き合う起業家の伴走者としてご協力くださっている古野さんに、edgeコンペの舞台裏のお話を聞きました。

―古野さんが、このコンペに関わり続けてきた理由とは?

私自身、社会課題に取り組む人たちの「最初の一歩」にいつも心を動かされてきました。アイデアが未成熟でも社会課題を抱える人々への想いは、ある。そんな人たちが、想いを言葉にし、仲間を得て、社会と繋がり、課題解決に向かう様子を18年間見続けてきました。そんな姿が私に大きな力をくれるんです。だから関わり続けてます。

―edge2025はどんな人に来てほしいと感じていますか?

「このビジネスプランを具体化していくぞ」という明確なものをお持ちの方だけでなく、「アイデアはあるけど、形にする方法がわからない」 「社会をよくしたいけど、自分に何ができるかわからない」 そんな“迷い”や“もどかしさ”を抱えている方にこそ、参加してほしいです。

コンペというと「競い合う場」の印象が強いかもしれませんが、私たちは「つながる場」「支え合う場」であることを大切にしています。経験豊富なメンター陣とのつながりだけでなく、参加者同士がつながり、アイデアを育て、想像以上の成長を遂げていくのです。

―ビジネスプランコンペが「つながる場」「支えあう場」になるというのは?

そうですね。半年間のコンペの前半にはコンペ参加者とメンター20名が集う一泊二日の合宿があります。そこはプランのブラッシュアップを集中的に行うだけでなく、経験豊富なメンターたちやさまざまな想いを抱えたコンペ参加者たちとじっくり話せる場でもあります。そういう中でメンターやコンペ参加者とのつながりが生まれ、コンペ終了後も支えあえる仲間を得られるのです。

―今年で21回目を迎えますが、過去の参加者にどんな変化がありましたか?

例えば、社会人経験ゼロの大学生が、自身の体験をもとにした教育プロジェクトを提案してくれました。当初は漠然とした課題感だけだった彼が、審査員やメンターとの対話を経て、現場に踏み出し、実際に教育支援団体を立ち上げるに至った。

そんなふうに、「ただのアイデア」だったものが、「誰かの人生を動かすプロジェクト」に進化していく瞬間は、何度見ても胸が熱くなります。

―コンペが「人生の転機」になることもあるんですね

実際、そんな場面を幾度も見てきました。いくつか紹介すると、会社勤めをしながら参加されたプレイヤーの方。こちらの方はコンペ終了後に思いきって独立開業。その後も、年に何度か連絡をくださって、お悩みを共有してくれる——あの時の経験が、彼にとっての出発点だったのだと思います。

またすでに創業されているなかで、コンペにエントリーをされた方の中でも印象に残っている方がいます。彼女は、非常に堅実なビジネスプランを提出されたのですが、合宿でお話をする中で「本当はこのサービスを全国に届けたい」という思いを涙ながらに語ってくれました。それまで見せていなかった本心が現れた瞬間でしたね。彼女はコンペで最優秀賞を受賞し、今では近畿圏から首都圏へと事業を拡大されていますし、edgeのメンターたちがいろいろ相談に乗っていますよ。

―edgeは「その後」も、ずっと伴走していく場なんですね

もちろん、コンペが終わった瞬間がゴールではないんです。先ほどお話しした「教育プロジェクトを提案してくれた大学生」は、NPO法人あっとすくーるの渡剛さんのことなんです。大学3年生でビジネス未経験ながら、「ひとり親の子の進学支援」というプランで参加されました。コンペを通じてプランを磨き、卒業前に起業。しかし、その後は壁の連続。「もう無理かもしれない」と思う場面もあったそうです。

それでも、コンペ当時の担当者やメンターたちが折に触れて支え続けた結果、今もビジネスを継続されていますし、塾の拡大に乗り出そうとされています。彼の姿は、「困難に直面しても支え続けてくれる人がいる」ことの大切さを私たちに教えてくれます。

―最後に、参加を迷っている方へメッセージをお願いします

完璧なアイデアじゃなくて構いません。むしろ、「何かしたい」と思ったその気持ちが、このコンペの原動力です。

社会を変える第一歩は、誰かに評価されることではなく、「自分の想いに向き合うこと」から始まります。edge2025は、あなたのその想いに、本気で向き合います。